「映像&史跡 fun」は、映像・テレビ番組・史跡・旅・動画撮影のヒントなどをご紹介するコラムです。


「旅番組」シリーズ(7)
旅番組とお城 ⑤ / 鉄の城


前回コラム「旅番組とお城 ④」からの続き

前回「旅番組とお城 ④」では、城主の目線、小田原征伐、小田原評定、北条氏などについて、ご紹介しました。
今回は、「旅番組とお城」の完結となります。

* * *

「旅番組シリーズ」では、旅に何をプラスアルファするかがテーマとなっています。
「旅番組とお城①~④」では、旅に、歴史や史跡をプラスして、お話しを書いてまいりました。
特に、お城を中心に、両番組の目線の違いを、ご紹介してきました。

旅ファンの方々…、お城や戦国時代に、少し興味を持っていただけましたでしょうか。
ご自身の次の旅のコースに、お城を入れてみたくなっていただけましたでしょうか。
古戦場とか、古墳とか、神社仏閣とか…、みな同じだと思います。
そうであれば、うれしいです。

今回は、まず、旅番組ではありませんが、
一味違った目線の、テレビの「歴史・史跡番組」をご紹介いたします。

旅ファンの方々には、「歴史への旅」くらいに思っていただけましたら、うれしいです。


◇目からウロコ

昨年だったか、それ以上前だったか忘れてしまいましたが、私は、これまでの歴史番組とは、まったく違う発想の歴史番組を見つけ、衝撃を受けたことを覚えています。
NHKの、歴史番組といっていいのか、医学番組といっていいのか迷いますが、「目からウロコ」の番組です。
私は、こんな目線で、歴史をとらえたことは全くありませんでした。

NHKの、「偉人たちの健康診断」です。

当初タイトルを見ただけでは、歴史上の偉人たちの死因や健康法でも探るのかと想像していました。
もちろん、それもありますが、そうしたものだけではありませんでした。
現代人にも通じる、医学や心理学の深層に切り込んでいるのです。
そして、歴史・史跡ファンをも うならせる内容が、しっかり盛り込まれているのです。

現代人はもちろんですが、古くから、医学と歴史には深い関係性があり、それが歴史をも左右しかねないという事実を、この番組で知ることにもなりました。


◇かつての病気対策

今でこそ、医学が進歩し、薬も手術もあります。
精神疾患の治療もできます。
心理カウンセラーもいます。
リハビリ医学もあります。

でも、これまでの日本史の中のたいはんの日本人は、そうしたものとは縁のない時代に生きていました。
ほぼ明治時代以降の人しか、その恩恵にあずかっていないのです。

それまでの庶民は、針、灸、指圧、温泉、薬草、漢方薬、果物、野菜、それに、まじない、信仰、祈祷、後は民間療法…、せいぜい、その程度の治療レベルの中で生きていたのです。

庶民に、消毒なんて発想はあったのでしょうか。解毒用の草とかはあったでしょうが…。
汚水と浄水も隣り合わせです。
外科手術なんて、できません。
冷蔵保存もできないのに、寿司を食べていたとは…。
現代からみると、ゾッとする世界です。
こんな世界で、80歳、90歳まで生きられた人は、もう人間の生命力を超えているように感じてしまいますね。

* * *

江戸時代は、「藪(やぶ)」にもなれない「たけのこ医者」と呼ばれた人たちが、たくさんいたと聞いたことがあります。
とにかく、「たけのこ医者」でもいいので、皆で相談したかったのでしょう。

あれが効くってよ
これが効くんじゃないか
あいつ試しにあれ飲んだら治ったよ
あそこの神社にお参りしたら治ったってよ

戦国武将たちも、家臣や兵士たちに、戦場での食べものの種類から、食べ方、料理の仕方まで細かく指示していましたね。
戦国時代は、戦時用の携帯用保存食も、さまざまに考案されました。
米も、味噌も、乾物も、かなり長期保存できる食品ですよね。

* * *

まずは、とにかく病気にならないこと、食中毒にならないこと、これが、庶民の最大の関心事だったのかもしれません。
現代でいう、予防医学の「未病」の思想ですね。
実は、この「未病」の思想は、近年、忘れられていただけで、相当に古い時代の中国から伝わってきたものだそうです。

庶民は、まず馬に乗ることはありませでしたが、高い地位の武将は馬に乗ります。
「かご」ばかりに乗っていた武将は、たいてい痔でした。
大将がかごですと、それは戦場で難儀しますよね。
武将には、予防できない病もあったということでしょうね。
タイムマシーンで、現代の「洗浄便座」を持っていったら、おそらく、お城ひとつと交換してくれるかもしれませんね。

温泉も、治療はもちろん、予防としての「未病」には最適ですよね。
戦国武将は、とにかく温泉で、刀傷などのケガの治療を行っていました。
ですから、領地の温泉の探索から開発まで、それは熱心でした。
金を掘っていたら、温泉が出たなんて話しも、山ほどありますよね。
でも、そのおかげで、今の日本は温泉大国です。
戦国時代の恩恵が、こんなところにも…。

現代でも、ここ数年でやっと広がってきた「未病」の思想ですが、大昔は、皆、かなり意識が高かったことでしょう。
おそらく昔は、皆、「病気になったら、薬で治せばいい」なんて誰も思っていなかったでしょうね。

* * *

よく考えてみてください。
今、風邪薬なしで、風邪を治すのに、どれだけたいへんか。
現代人は、最初から、風邪薬で治すつもりでいるので、風邪の予防などに、あまり注意を払いません。
腹巻き、のど巻き、三首冷やすな、背中にお塩…最近は、とんと耳にしません。

他にも、戦場での刀傷を、薬草と温泉だけで治そうなんて、どれだけ痛いか。
目が悪くなったからといって、メガネを買うことなんてできないのです。
虫歯を、麻酔なしで、糸で引っ張って抜くのです。

大昔の人々、どれだけ我慢強かったのか、想像もできません。

まして、古代人などは、どうしていたのでしょうか。
アフリカの自然の動物たちと同じだったのでしょうか。


◇コウノトリさん

ちなみに、古墳時代の土偶(どぐう)の中に、女性が出産する時の恰好をした土偶があります。
この土偶は、古墳時代に、おそらく かなり大事なものとして、女性の心のよりどころだったでしょう。
古墳時代はもちろん、日本では、ある時期まで、天井から吊り下げた紐を両手でつかんで、座り込んだスタイルで出産していました。
最近の時代劇ドラマでは、そうしたシーンはまず見なくなりましたね。マネされても、困りますしね。

現代人は、医学や科学を手にしましたので、出産は不思議なこととは感じませんが、江戸時代ごろまでの人々は、出産をどのようにとらえていたのでしょうか。
たしかに、出産は、医学のようでいて、医学でない気もします。
とはいえ、医学も必要です。

いずれにしても、現代でも、「コウノトリさんが運んできてくれる」という表現が残っていることは、精神的にはとても気持ちのいいものです。
渡り鳥が、どこか他の国、他の世界から、赤ちゃんを運んできてくれるというのは、誰が考えたのか知りませんが、人の心理を非常に上手く表現してくれたものです。
これは、医学なのか、文学なのか、はたまた哲学や思想なのか。
無事に、生まれてきたら、何でもいいです。

医学のある現代に生まれてきて、私は幸せだと思っています。


◇偉人たちの健康診断

さて、「偉人たちの健康診断」の話しに戻します。

そんな医学のなかった歴史の中に、現代の医学を持ち込むとは、あまりにも大胆!無茶!無謀!
でも、実に面白い!

歴史と医学を結びつけて、テレビ番組を作るとは、すばらしい発想です。

現代人は、すぐに医学に頼って、自分で考えようともしませんが、大昔の人たちは、それなりに考えて、考えて、考えぬいて たどりついた解決方法や打開策、紛らわす方法などを持っていたはずです。

ですから、現代人よりもはるかに、人体にあらわれる現象に敏感だったことでしょう。
前述のように、未病の思想も深かったでしょう。

戦国時代の、お城や城下町の構造にも、人間の身体的特徴や心理が使われていることは、現代でも 少しは知られていますが、この番組により、現代医学のチカラで証明してくれると、たいへんに実感できます。新たな発見もできました。

歴史に医学をプラスしてテレビ番組にするとは、まったく私の想像を超えていました。

おそらく、歴史や偉人には興味はなくても、医療従事者はもちろん、病気に難儀している一般の方々にも、この番組はたいへんに役立つのではないかと思います。
内容によっては、ビジネスヒントも隠されている気がします。

この番組のサイトには、次のような説明文が記載されています。
「健康のヒントは歴史にあり!歴史上の人物の日常生活や病歴、さらには健康へのこだわりから、現代の私たちが元気で長生きするためのヒントを探ります。」

歴史・史跡ファンの私としては、「長生きのヒント」にさほど興味はありません。
でも、歴史の中に、「医学」に似た何かが、しっかり活かされていたところに興味があるのです。
そして、この内容が、歴史や医学という学問だけでなく、多方面に役立てられるということに興味が引かれるのです。
私にとっては、歴史を知る驚きや喜びとは別の感動を与えてくれる、そんな歴史番組なのです。

* * *

私は個人的に、この番組の演出もかなり好きです。
司会は、NHKの有名な女性アナウンサーの渡邊あゆみさんで、レギュラータレントとしては、関根勤さん、カンニング竹山さんです。

いかにも病気持ちに見えるとはいいませんが、成人病予備軍のような中年男性の人選は、心にくいです。
このお二人の恰好が、いわゆる「サムイ服」です。時代劇ドラマのお医者さんがよく着ているようなものです。
二人とも、サムイ服が、非常にお似合いです。
もうひとり、毎回、ゲストが入れ替わり登場しますが、彼らもみな「サムイ服」です。

テレビ番組の出演者全員に、専用の同じ制服があったというのは、私の記憶にはありません。
あまりにも斬新な発想で、すばらしいです。

このサムイ服…よく考えてみると、入院患者の衣類に見えないこともありません。
ああ、この出演者たちは、この番組の患者なのかと気がつきます。

そして司会者が女医として、この番組をリードしていきます。
いかにも女医さん姿が似合う渡邊さんです。

よくよく考えてみると、入院病棟というのは、医療する側も、受ける側も、何か制服のようなものを着ていますね。

偉人たちに扮した役者さんが、この出演者に絡んでくれて、患者たちに一喝してほしい気もしますね。
民放のバラエティ番組風になりすぎて、ちょっと下品かな?

この番組は、歴史・史跡ファンとして、視覚的にも入り込めますね。
一見、地味に見える番組ですが、凝った演出や内容が、実に好きです。


◇松山城はお化け屋敷?


この番組の中に、愛媛県松山市にある名城、松山城を紹介する回が、先日ありました。
「あなたもダマされる 松山城はお化け屋敷!?」というタイトルでした。

人間の心理や行動を紹介する内容でした。
この城の城主、加藤嘉明の無類の心配性のことも紹介されていましたね。
お城ファンにはよく知られている、松山城の大土木工事のことも紹介されていました。

私たちのような映像屋も、画面の右側と左側の視覚効果を強く意識して映像を扱いますが、
人間の左回り中心の特徴や心理、不安感を抱かせる視覚的効果、渋滞がおこる原理などが、松山城の防御機能にも巧みに活かされていることが説明されていました。
それを二人の患者が、人体検証してくれているのです。もちろん、あの恰好で。

「旅番組とお城 ③」で「桝形門(ますがたもん)」の説明を書きましたが、この門もこの効果を巧みに利用しています。
私は「お化け屋敷」に行くような年齢ではありませんが、現代の「お化け屋敷」にも、こうした効果を利用しているということは知りませんでした。

近年の公共物は、そうした人間の行動の特徴や心理を、その構造の中にやっと取り入れてくるようになりました。
高度成長期の頃の公共物、例えば高速道路や街づくりなどは、それらを一切考慮していませんでした。
だから事故も多かったですね。
今、高齢者の逆走運転や、バリアフリー、避難経路など、多くの場所で取り入れらるようになってきたことは、たいへん うれしいことです。

* * *

松山城は、天守を含む主要城郭は高い山の上にあります。
ふもとには御殿などがありました。
この山はもともとは二つの山で、それを、あいだの谷を埋め立てて、ひとつの山にしたもので、当時としても、かなり大きな土木工事だったことでしょう。

埋め立てたところに、石垣を造り、細長い形状の平坦な場所を造ります。
そこに、天守閣や、やぐらなどの建物を建てていきました。
ですが、若干石垣が弱かったようで、天守閣は高層にできませんでした。
ですので、一般のお城の天守の雰囲気と少し違います。でも、その分、個性的な味わいが生まれました。

通常、井戸は、地表から水脈まで穴を掘っていきますが、この松山城では、川が流れていた谷を埋め立てたため、井戸構造の円筒形の石組みを、川から上に造っていきながら、周りを埋め立てていきました。
ですので、この井戸は当時、日本一深い井戸だったそうです。山頂の本丸井戸です。
山のふもとの二の丸の井戸も、びっくりの超巨大な井戸です。

「偉人たちの健康診断」の中では、城主の加藤嘉明の水へのこだわりを説明していました。

山まるごとの要塞の雰囲気を今でも残している、数少ない、たいへん貴重な松山城です。
お城ファンは、下から歩いて上るのも、面白そうです。かなり大変ですが…。

* * *

威勢が良くて、豪快で、決断力が早く、肝がすわっていると、武将は思われがちですが、
意外と、最後まで勝ち残った有力武将たちはみな、心配性でネチネチ型で細かい性格の人物が多かったような印象があります。
たしかに、「心配」のないところに、「防御」の発想は生まれません。
「防御」のないところに、「勝利」もありません。

「心配性」と聞くと少し不安になりますが、「慎重で、準備を怠らない」と言えば、印象は一変しますね。
「慎重の上に準備万端」であれば、自然と勇気と覚悟が目覚めますよね。
たしかに加藤嘉明の戦い方は、そうしたものでした。
それがお城の姿にも完全にあらわれています。

* * *

現代でも、成功する社長さんは、意外と細かいところまで、しっかり目を光らせていますね。
そういえば、前述の徳川家康も北条氏康も、細かいところを見るようにと、くどくど家臣に言っていましたね。
これも、「偉人たちの健康診断」のひとつでしょうか。

* * *

「旅番組」にも、この「医学」の分野をプラスした番組があってもいい気がしますね。
「食」と「旅」が、うまくマッチングされているのに、なにか、「医学」や「健康」とは、うまく結びついていないような気がします。
「医学や健康」に特化したバラエティ番組は結構ありますが、何かが足りない気もします。
旅行業界のツアーの中には、すでに、「旅行」プラス「健康診断」というかたちはありますよね。
まだまだ、旅番組には、いろいろな可能性がありそうです。


◇武将の外見

医学なのか、心理学なのか、よくはわかりませんが、名を残した有力名武将たちのことを思う時に、その外見の姿を想像することがあります。
信長、秀吉、家康…、名武将たちは、人生のある頃に、その外見の姿が変わります。

家康は、超ド派手な色や恰好、おかしな よろい兜、目立ちたがり屋…、そんなあきれた外見だったものが、地味な黒を中心に、ヘルメットみたいな兜、目立ちすぎないような方向に変わっていきます。
秀吉は、その逆。
信長は、まるで西洋風の王様に…。

私たちも、中高年になって、若い頃のままの恰好でいる方は、ほとんどいませんね。
センスがよくなる、おしゃれになる…とは別の変化です。

そうした、外見の変化をみると、その人物がわかるのかもしれません。
どんな考え方なのか、どんな生き方なのか…。
外見とは、意外と大事なことですね。

* * *

「能ある鷹は爪隠す」ということも、もちろん正しい考え方です。
現代の企業の社長さん方でも、できる社長さんほど、相手には、最低限のところまで、自分の有能さを悟られないようにしますよね。
悟られたら、身構えられるので、それがマイナスに作用することもあります。
「ふつうの社長さんだね」くらいが、何かとちょうどいい場合もありますよね。

自分を、実力以上に見せたがる武将は、たいてい、歴史の途中で去っていきます。
「旅番組シリーズ(1)」で書きましたが、家康は、人生が途中で大きく変わります。…変えます。

家康は、ある段階まで、実力以上に見せようとしていたのかもしれません。
武将ですから、甘く見られないようにすることも大切でしょうが、やり過ぎはいけませんね。
家康は、人生の途中から、やり過ぎなくなり、むしろ、控えめな姿に見えてきます。
その後、ある時に、本当の実力を内外に、意識して見せ始めます。

信長や秀吉よりも、自我を制御できる武将だったのかもしれませんね。
お城の姿を見ても、その二人の城とは何か違う気がします。


◇武将の心理

前回「旅番組とお城④」で書きました、小田原城の北条氏政は、秀吉に対して、瞬間的に「キレた」のではなく、継続的に「キレ続けた」のかもしれません。
もう自我を制御できない状態で、冷静な判断力を失っていたのかもしれません。
そのことすら、自分で気がついていなかったのかもしれません。
小田原評定の背景には、そんなことも影響していたのではと思ってしまいます。

このように、キレた武将とは逆に、「旅番組シリーズ(1)」で書きましたが、小早川秀秋は、キレることもできません。
おそらく、そういう性格だったのではと思います。

「俺は、なぜ、こんな不遇な立場なんだ。なんて、運が悪いんだ。俺にどうしろと言うのだ。俺にはそんな実力はないんだ。俺に期待するなよ」といった
超ネガティブな武将だったのかもしれません。
もともと、武家ではなく、普通の農民だったはずの人生が、秀吉のせいで、歴史の表舞台に無理やり引っ張り出されたような人物です。

テレビの時代劇ドラマでは、目立たせなければいけないこともあって、妙に派手で立派な恰好の秀秋がよく登場しますが、おそらく、そんな恰好を好む武将ではなかったように感じます。

現代でも、いじめや、集団で特定の人物に集中砲火することが、起きることがあります。
秀秋は、関ヶ原の後に、まさに集中砲火を浴びます。
「旅番組シリーズ(1)」では、家康が、その構図を意図的につくったと書きましたが、武将どうしの戦い方の中には、武力衝突だけでなく、そうした心理戦もありました。

前述の北条氏政と小早川秀秋は、死の少し前の頃に、精神疾患であったという説があります。
心理戦の敗者といえるのかもしれませんね。

「旅番組とお城①」では、家康と石田三成の心理戦のことも書きました。
家康は、心理戦で、次々に、敵を撃破していったのかもしれませんね。
もちろん、「大坂の陣」も同じですね。


◇鉄の結束

武将には、いろいろな性格の人物がいました。
旅ファンの方々も、そんな視点で、お城や武将を見ると、楽しいですよ。

あなたは、戦国時代にいたら、どんなタイプの武将ですか?

あなたのタイプの周りには、どんなタイプの重臣がいますか。

集団のトップの人間的タイプと、その周囲の人間のタイプの組み合わせ、
すぐれたトップの武将は、そのこともしっかり考えていたと思います。

織田信長と明智光秀、豊臣秀吉と石田三成。
この組み合わせは、トップにとって、よかったのでしょうか。

家康は、しっかり分析したと思います。
家康は、意識的に、いろいろなタイプの家臣を周囲に置きました。
彼は、その時代の状況に合わせて、近くに寄せる家臣を見事に変えます。
トップを戒められる家臣がいれば、それだけでいいということはありません。

家臣たちも、自分自身がどのタイプかは理解していたことでしょう。
家康だけが優秀だったわけではないと思います。
その周りの家臣たちも、いかにも優秀で、組織とは何かをしっかり理解していたように思います。
このことを考えただけでも、徳川集団がいかに強力だったのかがわかります。

まさに「鉄の結束」がそこにあったのでしょう。
織田や豊臣の集団には、それがなかったのかもしれませんね。


◇鉄の武将、鉄の心

戦国時代最後の勝者は徳川家康です。
なんと、当時としては長寿の75歳まで元気でした。

戦国時代の武将は、ほとんどが病気持ち。
皮膚病、癌、脳梗塞、痛風、糖尿病、高血圧、骨折、前立腺肥大、精神疾患…、現代人とかわりはなかったでしょう。

家康は、サナダ虫に始終 苦しめられていました。
今でいう整腸剤の「虫くだし薬」は、どの程度効いたのか、わかりません。
家康が、鯛の天ぷらが原因で亡くなったという伝説めいた話しがありますが、これも疑わしい話しです。

75歳という年齢からしたら、癌の可能性もありますし、血圧も高かったでしょう。
家康自身が調合していた薬もかなり怪しいです。
高齢の家康です。薬の調合を間違えた可能性もありますね。
薬草の中には、猛毒のトリカブトも使われていました。

戦国時代は、寿命をまっとうした武将が少ない時代です。
たいがいは、病気やケガ、戦闘で50歳くらいまでには亡くなっています。
そうした中で、75歳は大往生です。

おそらく、この時代は、みな、病気やケガだらけで、「健康」などという思想はなかったかもしれませんね。

家康は、「鉄の身体」、「鉄の心」を、自分の中につくりあげたのかもしれませんね。
「健康」こそが、天下を取らせたのかもしれません。


◇鉄の城

私は、戦国時代や江戸時代のお城に相当するような、現代の建物は何だろうと考えることがあります。

皆さんは、何だと思われますか。

武将を、現代の企業の社長や政治家と考えれば、お城は、さしずめ、役所か企業の本社あたりでしょうか。
でも、見た目がだいぶ違う気がします。

パッと見の見た目からいうと、私は、コンビナートの工場群あたりかなと思っています。

学生の頃に、授業で出てきましたね。
京浜工業地帯、中京工業地帯、阪神工業地帯、北九州工業地帯…。
この四大工業地帯はもちろんですが、それ以外の地域にも、さまざな工場や関連施設、輸送基地、港湾、発電所などが集まった、コンビナートと呼ばれる広大な工業施設があります。その周囲には、従業員の住まいがかたまって、あります。

私は、1970年代のコンビナート最盛期の頃の、三重県の四日市コンビナートの夜景を、道路を走る自動車から見た記憶があります。
まだ子供の頃でしたが、その衝撃は今でも、思い出します。
美しいという感動とは違う、圧倒される迫力を感じました。
現代のコンビナートのような姿とはまた違う、異様な姿です。照明も、今とはかなり違っていました。
とにかく、その頃は、公害そっちのけで経済発展至上主義の時代です。
今の時代よりも、コンビナートはすごかったような印象がありますね。

それでも、今のコンビナートも大迫力です。
現代は、1970年代とちがい、整然とした美しがあります。

港湾の近くに、お城のお濠のように区分けされた場所もあります。まるでお城の曲輪(くるわ)のようです。

煙突のてっぺんから大きな炎をあげているところなどは、お城の「かがり火」のようにも見えます。
炎をあげている煙突など、街の中や周辺にはありません。

砂や石炭、原材料などの大きな山もあります。
燃料満載の石油タンクが、大迫力で並んでいます。
鉄道の引き込み線や、大型トラックの基地があったりします。
大迫力で蒸気を吹き上げる施設もあります。
さまざまな形と高さの煙突が、ニョキニョキ立っています。
さまざまな種類の工場施設が、ところどころに立っています。

そして圧巻は、とてもつもなく複雑なあのパイプ群です。
多くの工場施設をつないでいます。
どうしたら、あのような複雑なラインができあがるのでしょう。

それは、時に、お城の石垣のようにも見えます。
多くの工場施設は、まるでお城のやぐら群です。
天守は、もちろんメインの巨大施設です。

軍馬にかわって、トラックも、貨車もいます。もちろん船もいます。
燃料も、原材料もあります。
もちろん、人もいます
そして、夜になると、その敷地中で、照明が輝きはじめるのです。

この巨大要塞のようなコンビナートの光景…、これはまさに、戦国時代の低層の建物の街の中で、異様に巨大な姿でそびえる、お城の姿に近かったのではないでしょうか。

戦国時代は、石と木と土で造られたお城でしたが、現代は、まさに「鉄の城」です。
ここに、武家の「のぼり旗」でも並んでいたら、まるで、大城郭のように見えてしまいますね。


* * *

私は、工場ファン、コンビナートファンは、もしかしたらお城ファンでもあるのではと思うことがあります。
何か、共通するものがあるのではと、ひそかに感じています。

私は、今、人気の「工場見学ツアー」に参加したことはありませんが、歴史・史跡ファンがお城を訪ねる感覚に近いものなのかもしれませんね。
機会があったら、ぜひ、そんなツアーに参加してみたいと思っています。
でも、戦国武将の影が、その中にないことは、少しさみしいですね…。


◇旅先の名所、それが「お城」

細かな歴史や構造にはまったく触れずに、ただただ、お城を美しい風景として見ることも、非常に幸せなことです。
平和な時代におけるお城の役割とは、こうしたものなのも現実です。

「旅番組」の中のお城は、まさに旅先の名所なのです。
歴史など知らなくても、十分に楽しめます。

本来、お城の「旅番組」の質は、まさに、風景の映像いかんで、その真価が問われる気がしますね。

「歴史の中のお城」と「旅先のお城」
あなたは、どちらのお城がお好きでしょうか?

私はどちらの番組ジャンルも好きなので、目線は使い分け…。


◇旅番組とドローン

さて、もうひとつ、お城番組に新しい風を吹き込んでくれた番組が、以前にありました。

かつて、フジテレビ系列で「おしろツアーズ~絶対行きたくなる!おもしろ名城旅」という旅風のお城番組が、数年前まで何回か放送されていました。
司会は、お城好きで有名なタレント、田村敦(たむら あつし)さんでした。
今、テレビ番組で、日本各地の池の水を抜いているあの方です。

今ほどドローンが普及していなかった時代でしたが、この番組では、お城の建物のまわりにドローンを飛ばして、今まで見たことのないお城の風景をたくさん見せてくれました。
観光客の目では絶対に見ることのできない風景です。
お城ファン必見の番組でしたね。

主要な番組内容は、お城をテーマにしたバラエティで、歴史やお城をまったく知らない、興味もない、そんなタレントさんたちを集めて、クイズのようなことをしていました。
田村さんが、熱心に解説しても、聞いているのか、興味があるのか…、ちんぷん かんぷん。
このくらい、どうでもいい態度でいてくれたほうが、お城ファンとしては、逆に気持ちがいいです。
とんちんかんな発言で、時折 笑わせてくれれば、もう十分です。
これまでの旅番組や史跡番組にはなかった、ドローン映像さえ見られたら、それだけで大満足の番組でした。

航空写真や空撮映像にはない、ドローン映像でしか見られない俯瞰(ふかん)映像も、いつかまた見てみたいですね。

ドローン映像は、「旅番組」に加わった新しい見せ方です。
きっと、旅番組にはかかせない映像になっていくのでしょうね。

空撮の旅番組については、「旅番組シリーズ」で、また別途、ご紹介するつもりでおります。

淳さんには、池の水がきれいになった暁に、またお城に戻ってきてほしいと思いますね。

この前、池の水抜き番組を見ていましたら、小田原城のお濠の水を抜いていました。
私的・公的・ビジネス的とは、さすがに抜け目のない、現代のお殿様です。
立派な現代の武将ですね。


◇「旅番組とお城」終了

近年、「旅番組」と「歴史・史跡番組」は、その着眼点や目線、テーマなど、たいへんに工夫されてきましたね。

近年のNHKは、両ジャンルの番組において、それは頭をひねって、相当にがんばってくれています。
試行錯誤の努力にも感服しますね。
でも、今後、「働き方改革」が、どこまで影響するのか、まだわかりませんね。

NHKには、今回のコラムで紹介しました「偉人たちの健康診断」をはじめ、優れた歴史番組も多数あります。
「旅番組シリーズ」が終わりましたら、「歴史・史跡番組」のシリーズも別途、考えております。
制作費や視聴率のことも、たいへんでしょうが、民放もがんばってほしいですね。

今回の「旅番組とお城」では、5回にわたり、「旅」に「歴史」をプラスして、いろいろ書いてきました。
「旅番組とお城」は、ひとまず、今回で終了いたします。

このコラムは「映像&史跡 fun」ですので、これからも、このコラム内の「史跡 fun」はもちろん、「旅番組シリーズ」の中にも、随所に、歴史やお城の話しが登場してくると思います。
歴史・史跡ファンの皆様には、これからも「旅番組シリーズ」を、ぜひともよろしくお願いいたします。

* * *

「旅番組」は、もはや、「旅好き」の人間だけではつくれないのかもしれませんね。
これからも、この「旅番組シリーズ」では、「旅」に、いろいろなものをプラスして、ご紹介してまいります。

次回からは、「旅」に、「人生」をプラスしてみようと思っています。
意外と、「旅番組」の中には人生が盛り込まれていますよ。
そんな旅番組をご紹介する予定です。

それでは、次回で…。



2019.7.26 jiho
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