「映像&史跡 fun」は、映像・テレビ番組・史跡・旅・動画撮影のヒントなどをご紹介するコラムです。


「旅番組」シリーズ(8)
旅番組と人生 ① / 旅に出ます


「旅番組シリーズ」は、今回から、「旅番組と人生」がはじまります。

* * *

「旅番組シリーズ(1)」では、本シリーズのプロローグとして、徳川家康の「東照公御遺訓(とうしょうこうごいくん)」と「関ヶ原」について書きました。

「東照公御遺訓旅」の冒頭は、「人の一生は重荷を負いて遠き道をゆくが如し…」で始まります。
人生を旅にたとえた表現ですね。
皆さまの人生の中にも、一度か二度、勝利したかどうかにかかわらず、「関ヶ原」があったことと思います。

日本人は、「人生」を、「旅」や「道」になぞらえるのが、大好きですね。
そうした流行歌も、古今たくさん存在しますね。

* * *

皆さまは、実際に、どのような旅行をされますか。

目的地を決め、行動内容や日程を決め、宿泊施設を決めて出発されますか。
それとも、目的地だけを決めて、それ以外は、旅先で考えますか。
目的地や日程すら決めないで出発されますか。
どれも、立派な旅ですね。

人によっては、予定が決まっていないと出発できない方もいます。
また、人によっては、予定をしっかり決められると出発できない方もいます。
どんなかたちの旅にも、対応できる方もいます。
中には、誰かが引っ張っていってくれなければ出発しない方もいます。
どれも、立派な旅人ですね。


◇旅するドラマ

「旅番組シリーズ(2)」では、今回のシリーズで一応扱う「旅番組」の種類について書きました。
実は、この中にドラマはあえて入れてありませんでした。

ドラマのタイトルの中に「旅」が入っているものも少なくありませんが、これは人生を旅と表現しているもので、ほとんどのドラマでは、そのドラマの中で実際に旅をしていません。

そうした中、本当にテレビドラマの中で旅をするものを、二つご紹介します。


◇西遊記

有名な「西遊記」です。

これは、中国の唐の時代に、僧である玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)が、中国からインドへ、仏教の経典を受け取りに行くお話しです。
629年から645年の実際の彼の旅を記録した文献をもとにつくられた、空想の物語です。

孫悟空(そんごくう)、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごしょう)が三蔵法師の家来です。
法師が乗る馬は、玉龍(ぎょくりゅう)です。
さまざま妖怪や怪物、悪党などがたくさん登場する冒険活劇ですね。

これまで、テレビドラマも、たくさん作られてきました。
一番当たったものは、1978年から2年ほど放送されたテレビドラマの「西遊記」、「西遊記Ⅱ」でしょうか。
堺正章さん、夏目雅子さん、西田敏行さん、岸部シローさんが出演され、ゴダイゴが歌った「ガンダーラ」と「モンキーマジック」は大ヒットしましたね。
楽曲「ガンダーラ」は歌謡曲の歴史に残る名曲となりました。
世代ごとによって、なじみの「西遊記」、なじみに「孫悟空」が、きっとあることでしょう。

これは、旅の目的地や理由が、明確な旅ですね。
目標に向かって、ひたすらがんばる人生の旅です。


◇裸の大将放浪記

もうひとつは、「裸の大将放浪記」です。

1980年から、なんと17年も放送されたようです。2000年代に入って、主演俳優が変わって復活しましたね。
これは、画家の山下清さんをモデルにした旅のドラマです。

日本全国、旅をしながら、いろいろな経験をします。そして、それを絵にするのです。
ドラマの最後の、あの水戸黄門のような、顔バレのくだりと逃げ出すシーンは、毎回楽しかったですね。
もちろんドラマの主演は、芦屋雁之助(あしや がんのすけ)さんでした。

ダ・カーポが歌った主題歌の「野に咲く花のように」も大ヒットしましたね。
こんなにも、ドラマにピッタリの楽曲が、よく生まれたものです。

山下清さんは、戦前の生まれで、知的障害のため兵役は免除されていました。その頃の放浪をもとにドラマがつくられました。
ある程度の年齢以上の方でしたら、彼の、ちぎり絵や絵画を創作する姿の映像を、テレビで見たことがあるのではないでしょうか。
ドラマの中の彼の姿は、少し誇張があるかもしれませんが、非常に人間味がありましたね。

彼は、「裸の大将」とか、「日本のゴッホ」と呼ばれていました。実際に、ゴッホの絵を勉強したようです。

現代でも、「ヘタ上手(へたうま)」という言葉がありますね。
一見、へたくそな絵画に見えるのに、人の心をつかんで離さないような絵のことです。
そうした絵に、「ヘタ」という文字は不要のはずですね。

フランスの名画家のアンリ・ルソーや、ピカソの後期を、みな「ヘタ上手」とは言いませんね。
最高レベルの芸術以外の何ものでもありません。
山下清さんも同じですね。

この旅は、目的地や目標のある旅ではありません。
まさに放浪です。
とはいえ、結果的には、大きな意味のある「放浪」でした。

* * *

戦前生まれの、山下清さん、棟方志功(むなかた しこう)さん、岡本太郎さん、草間彌生(くさま やよい)さんなど、その作品も、ご本人の個性も、あまりにも強烈すぎて、本当の芸術家とはこうしたものなのだと、常人にしっかり教えてくれていますね。

「西遊記」も、「裸の大将放浪記」も、ドラマの中で、旅をしています。
モデルとなった主人公も、人生のある時期に、本当に旅をしていました。
彼らは、その旅の中から、すばらしいものを幾つも発見し、自分の中に取り込んでいきました。

そのドラマを見ていた私たちも、旅の素晴らしさを実感できる、そんなドラマでしたね。
素晴らしい「旅番組」であることには、まちがいありませんね。


◇かっ飛ばせ

さて、映画では…。

旅する外国映画で、まず思い出すのでは、1970年代前半の、いわゆる「ロードムービー」といわれた作品です。
「イージーライダー」、「俺たちに明日はない」、「明日に向かって撃て」などのアメリカン・ニューシネマの作品たちです。
旅と人生が組み合わされていましたね。

「イージーライダー」に感化されて、バイク乗りになった中高年ライダーも多いと思います。
今でも、高速道路を中年ハーレー軍団が、速度順守で、かっ飛ばす光景を、時折見ますね。
まだまだ元気そうです。

1970年代後半には、「トランザム7000」などのアメ車のスポーツカーでかっ飛ばす映画シリーズもありました。
バート・レイノルズさんのようなスターが生まれてきましたね。
この頃は、日本国内でもアメ車をよく見かけましたね。

同じ時期に、「コンボイ」などの、大型トラック集団の映画も大ヒットしました。
運転手さんどうしで、無線で会話して、何か楽しそうでした。
この頃のイメージのままの、トラック運転手さんたち、日本にもまだまだ、たくさんいますよね。

両者とも、旅の雰囲気やコメディの要素があって、とても面白い映画でしたね。
しっかりと、旅と人生が絡んでいました。

* * *

1970年代は、日本でも、映画「トラック野郎」が大ヒットしていましたね。
菅原文太さん、愛川欽也さんが出演されていました。

世の中も、デコトラの大ブームでした。
電飾チカチカ、ペイントハデハデのあのトラックです。
高速道路上の、まさに、走るパチンコ屋さんのようでしたね。
今考えると、あの電飾の多さは、何だったのでしょうか。

ラジオの深夜放送番組も、トラックドライバー向けの、文化放送の「走れ歌謡曲(現在も放送中)」、TBSの「歌うヘッドライト」が大人気でしたね。
「ドライブ・イン」からの中継とかも、やっていましたね。

デコトラの電飾ブームは、子供たちの乗る自転車にも波及しました。
ウインカーと呼ぶ、電飾の方向指示器が自転車の後部についていたのです。
少年たちは夢中でしたね。

欧米も日本も、「ドライブ・イン」は、ほぼ死語のようです。
若者に、それ何?と言われそうです。
ある年齢以上の世代は、今でも、ついついクチから出てしまう言葉ですね。

今の高速道路のサービスエリアとも少し違います。
「道の駅」のような施設にも、似ているようで違います。
とにかく、トラック運転手たちのオアシス?、ワンダーランド?

死語が次々に出てきますが、ついでに、「かっ飛ばす」も、今や野球の応援くらいでしか耳にしませんね。
人生、かっ飛んだ野郎たちが、たくさんいた70年代、80年代のお話しです。



◇ケンメリ

そういえば、日産自動車のスカイラインの、あの大ヒットテレビCMも、1970年代です。
「道の向こうへ出かけよう…ケンとメリーの愛のスカイライン」

スカイラインとは、日産自動車の名車のことです。
スカイラインは、もともと日産自動車と合併する前のプリンス自動車が開発した名車でした。
「スカイラインの父」と言われた桜井眞一郎さんは、なんとコンクリートミキサー車も開発した人物です。

1968年から1972年のスカイラインは、いわゆる「ハコスカ」と呼ばれていましたね。
その頃のテレビドラマにも、たくさん登場していました。
最近でも、年に数回ほど、街で走っている姿を見かけます。愛されたクルマですね。

その頃、あの「GTーR」が誕生しました。
今、テニスの大坂なおみちゃんが大好きな、あの「GT-R」です。
「スカG」という呼び方も、かつてありましたね。

1972年に、あの「ケンメリ(ケンとメリー)」が登場しました。
丸型4灯のテールライトのあのモデルです。
あのテレビCMと、お尻が重そうな重厚感たっぷりのデザインです。売れないはずはありませんね。

* * *

今、日産車は、相当に売れ行きが悪いそうですね。
例の問題も影響しているのでしょうが、魅力的な新車が生まれにくいのでしょうか。
たしかに、人がクルマに求めるものが大きく変化してきています。

スカイライン、セドリック、グロリア、ブルーバード、シルビア、フェアレディℤ、シーマ、エルグランド、サニー…。
本当にクルマらしい名車を次々に生んできた日産です。
苦境を、何度も乗り越えてほしいですね。
日産だけでなく、何か今、日本人のものづくりの能力が試されている気がしています。

さて、この「ケンメリ」のテレビCMでは、「旅に出かけよう」と言っていました。
70年代から80年代のCMは、「クルマで旅に出かけよう」という内容が、非常に多かったですね。
現代のような、家族全員でクルマに乗っているシーンなどはまずありませんでした。
アウトドアの風景が背景にあることなども、ありませんでした。
今は、視点がかなりちがっていますね…。

近未来、運転手がいない自動運転のクルマの中で、家族団らんなんてCMが出てくるのでしょうね。
70年代の「クルマで旅に出かけよう」とは、かなり違うイメージの「出かけよう」の風景ですね。
高齢化社会の中のクルマには、これのほうがいいのかもしれませんが、何か釈然としません。
この旅の中には、「人生」がない気がします。


◇孤独なランナー

70年代、アメリカのロック歌手、ジャクソン・ブラウンのある名曲が大ヒットしました。
「ランニング・オン・エンプティ(邦題「孤独なランナー」)」です。

その歌詞の中に、次のような内容があります。

車輪の下の道路の流れを見ながら、ある男は昔の自分のことを思い出します。
どこを走っているのかもわからずに、がむしゃらに突っ走る、若い頃の自分自身です。
その道が、どこで今の道にきりかわったのかも自分ではわかりません。
周りにいた男たちも、みな自分と同じなのです。
目標に向かって走っていたはずなのに、どんどん遠くになっていくのです。

全体の一部だけですが、このような内容の部分がありました。
ちょうど、前述のロードムービーが流行っていた70年代前半の大ヒット曲です。

クルマとともにあった人生…、これから、いったいどこに向かうのでしょうか。
孤独なランナーの人生は、どこに…。

* * *

外国高級車の販売会社ヤナセの、今のCMのキャッチは、何年か前から
「クルマはつくらない、クルマのある人生をつくっています」というものですね。
よく、テレビやラジオで耳にします。

かなり古くからある、いろいろな場面で使われた言葉表現ですが、たしかにクルマを製造しないヤナセにはピッタリな言葉です。
ですが、クルマと、旅と、人生が、深くつながっていた、70年代、80年代の匂いがプンプンしますね。
今の時代には、はたして どんな人生が、クルマとつながっているのでしょうか。

「人生」と「旅」は、今も昔も深くつながっています。
クルマは、これから どのように社会や人と絡んでくるのでしょうね?


◇旅する中高年

せっかく、外国映画の話しが出ましたので、私の大好きな「旅する映画」を二つご紹介したいと思います。
中高年の男性向けですが、女性が中高年男性を知るのにも、いい映画だと思います。
私も、時折、見返す映画です。

ひとつは、2007年のアメリカ映画で「WILD HOGS(邦題:団塊ボーイズ)」です。
邦題の「団塊」とは、もちろん団塊世代の「団塊」です。
コメディタッチの映画で、前述の「イージーライダー」や「トランザム7000」、「コンボイ」あたりが好きだった方も、十分楽しんで頂けると思います。バイク乗りの中高年世代には、特におすすめです。

「イージーライダー」で主演した、ピーター・フォンダさんが、ちょっとだけ登場しますよ。
「サタデーナイト・フィーバー」で主演した、ジョン・トラボルタさんが、中年姿で登場しますが、これがなかなかカッコいいのです。
中年オヤジたちが、現実をかなぐり捨てて旅に出ます。笑って見てください。

* * *

もうひとつは、これも2007年のアメリカ映画です。
「The Bucket List(邦題:最高の人生の見つけ方)」です。
ジャック・ニコルソンさんと、モーガン・フリーマンさんという名俳優の二人が共演した作品です。
余命6か月の二人が、人生最後の旅に出発します。
笑いと涙だけではない、何かを深く感じさせてくれる映画です。
名作映画の一本です。

実は、今年2019年の秋に、日本版の映画が封切りとなります。
なんと、吉永小百合(よしなが さゆり)さんと、天海祐希(あまみ ゆうき)さんの、女性二人による共演の映画だそうです。
このお二人なら、きっと大人のいい映画だと思います。
モーガン・フリーマンさんのほうが、吉永さんなのでしょうね。
金持ちの豪快社長は、天海さんでしょうか。
どんな女性二人旅を見せてくれるのでしょう。
女性版の「最高の人生の見つけ方」に、たいへん期待しています。


◇寅さん

日本の映画の話しに戻します。

日本映画で、旅をするものといえば、まずあの映画でしょうか。

「男はつらいよ」のシリーズです。

主人公は、「寅さん」こと、車寅次郎(くるま とらじろう)です。
ここも、「クルマ」ですね。
もちろん、主演は渥美清(あつみ きよし)さんです。

毎回、旅する場所が変わりましたね。ほぼ日本じゅうです。
旅先で恋をして、いろいろあって、お決まりのとおり、その恋は実りません。
そしてまた、次の旅が始まります。
人生の中に旅があるというよりも、旅の中に人生があるという感じですね。

こういう生き方は、やれそうで、実は、まず やれません。
こういうふうに生きたいと思いながら、こうなってはいけないとも思ってしまうのです。
人生は旅のようですが、旅人であっては生きてはいけません。
憧れとともに、やっぱりなと思ってしまう、この安堵感というか、安心感というか、不思議な満足感です。
私には、そんな映画でした。

映画シリーズの最後の旅先は、阪神大震災直後の神戸でしたね。
私は、今でも、寅さんがどこかを旅しているような気持ちになってしまいます。


◇旅の効能

人間は、年齢を重ねてくると、お風呂に入る意味あいが変化してきますね。
若い頃は、衛生的に、疲労回復にという意味あいがほとんどでした。
場合によっては、入浴せずに、シャワーだけでも十分でした。

この入浴という行為は、前述の意味あいとは別に、体内時計を調整するという効果があります。
毎日、人は体内時計が微妙にズレるそうです。
それを調整してくれるのが、だいたい決まった時間に行う入浴だそうです。

外国旅行の際の時差ぼけの修復に、まずは脂の多いステーキをしっかり食べるようなことに近いのかもしれません。

体内時計のズレは、睡眠障害の原因にもなりますよね。
無理がきかない年齢になってくると、この入浴は、身体的に、非常に重要なものになってきます。

私は、この入浴の効果と、旅をする行為は非常に近いのではないかと感じています。
入浴は身体のズレの修復ですが、旅という行為は、精神的なズレを修復してくれるのかもしれません。

旅によって、何かを発見したり、感じたり…。
人生を思ったり、思い出に浸ってみたり…。

テレビの旅番組の中では、自分の人生だけでなく、他人の人生を見ることもありますね。
旅番組の中の、旅人の人生、旅先に住んでいる人の人生…。

旅番組は、情報収集、気晴らし、暇つぶし、癒し、感動、笑いなどはもちろん、その中に、自身の新たな生き方を見つける場合も少なくありません。

そんな人生のつまった、ドラマではない「旅番組」を、次回から、ご紹介していこうと思っています。

* * *

池や沼で、蓮(ハス)の花がきれいに咲く、今日この頃…。
最後に、「男はつらいよ」の主題歌の一節を…。

「どぶに落ちても根のある奴は、いつかは蓮の花と咲く…」

蓮の花たちも、顔で笑って、どろの中の腹では泣いているのかも…。

それでは、次回で…。
入浴は忘れずに…。



「旅番組と人生②」へ続く

2019.7.28 jiho
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