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昆虫すごいぜ! カマキリ先生もすごいぜ!

今年は、ゴールデンウィーク10連休中ですので、子供たちが好きな昆虫の「すごいテレビ番組」をご紹介します。
NHK Eテレ(旧NHK教育テレビ)で、不定期に放送している「昆虫すごいぜ!」というテレビ番組です。
「すごい!」という言葉が連発するこの番組、ほんとにすごいです。

まず、すごいのが、番組の進行が、緑色のカマキリの着ぐるみの「カマキリ先生」です。
この先生が、なんと、あの名俳優の香川照之(かがわ てるゆき)さんなのです。

数年前に大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」で、主人公のライバル大和田常務役を演じた俳優さんですよね。
あの大和田常務が「カマキリ先生」になって、戻ってきました。
そのおしゃべりやアクションが、常務のごとく、熱い!熱い!

香川さんは、子供の頃から、大の昆虫マニアだそうで、カマキリはナンバーワンのお気に入りだそうです。
ですから、この番組への熱意が、これまた「すごい!」

カマキリ先生の今年最初の番組あいさつの冒頭をご紹介します。
「今年も、虫をとって、虫をとって、昆虫、昆虫、また昆虫、ずっと昆虫を捕りつづける『昆虫すごいぜ!』の時間がやってまいりました。」
チカラ強さいっぱいです。大和田常務ファンの期待を決して裏切りません。

さすがにカマキリ先生です。豊富な教養とボキャブラリー、俳優ならではの視点と豊富な表現力、その辺の若手芸人よりもはるかに面白いおしゃべり。
そして、昆虫のすごさの解説だけではありません。人生についても語り出す。すごい!。

個人的には、番組ナレーションの石澤典夫さんも、とても「すごい!」です。
「チコちゃんに叱られる!」の森田美由紀さんといい、昨今のテレビ界は大ベテランのアナウンサーが大活躍ですね。
若手や中堅にはできない大ベテランのしっかりとした おしゃべりは、テレビ番組に絶大な安定感と安心感を感じさせてくれます。
きれいで、おちついていて、さらに人間味を少しだけ加える…、日本語のおしゃべりの見本を聞かせてくれます。
AIの音声技術がいくら進化したとしても、このお二人の領域には、おそらく到達できないでしょうね。

* * *

NHKの人気番組「ためしてガッテン(現在のタイトルは「ガッテン」)」の昆虫版のようなこの番組ですが、発想と実験内容という点では、ぶっ飛んでいます。

教室で、カマキリ先生が、カマキリ生徒たちに、ホワイトボードで切々と講義する授業風景も斬新ですごい!
虫にむかって、「オレと交換しないか。人生」ときっぱり言えるカマキリ先生。いや、常務、ついていきます…。

カマキリ先生が、昆虫と同じ動作を実際に行ってみるという、番組内の体感コーナーは、まさに番組の目玉です。
昆虫の「すごさ」が、ストレートに実感できます。
昆虫って、こんなにすごかったのか!
テレビでこんな見せ方があったのか!番組スタッフすごいぜ!
それを体験するカマキリ先生もすごいぜ!
この感覚は、図鑑や書物、普通の動物番組では、感じることができません。

バッタのジャンプって、こんなにすごいの!
トンボの急旋回って、こんなにすごいの!
子供だけでなく、大人でも、引きこまれるような番組です。この番組は、世界各国で喜ばれる気がしますね。

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さて、 もともと、今、地球に生きている動物や昆虫、植物は、きびしく長い生存競争を乗り越えて、生き残ってきた種ですね。
人間の場合でしたら、他の生き物よりも、ずば抜けて有能な頭脳を持ち、火も恐れないでコントロールでき、二足歩行も実現しました。この頭脳は最大の武器です。
昆虫たちも、それぞれ、他の生き物にはない、突出した能力を持っていることで、生き残ってきたのでしょうね。

今の時代の昆虫は、人間の大きさよりも、圧倒的に小さなサイズですので、その「すごさ」を当たり前のように感じてしまいがちですが、カマキリ先生が昆虫になるという体感実験を行ってくれることで、その「当たり前」の意識を見事に壊してくれました。

オリンピック選手たちは、人間の世界では「すば抜けた、すごい運動能力」ですが、昆虫や他の生き物と対決したら、きっと彼らに笑われるでしょうね。
人間の目は、真っ暗な闇の中では、物をまったく見ることができませんね。光がどうしても必要です。でも、他の動物たちや昆虫は暗闇でも見ることができますね。
人間の目はなんと、お粗末な代物なのでしょう。
でも、目の前の暗闇を、明りで照らすことで、カバーしています。頭脳の勝利ですね。

私は、昆虫に明るいわけではありませんが、カマキリは昼間と夜間では目の色が変わることは知られていますね。
夜になると、サングラスをしたようにまっ黒になります。
詳しくは知りませんが、実際には人間が黒色と認識しているとのことのようです。


昆虫の目は無数にあって、それが二つから四つくらいに集まっていると聞かされても、よくわかりません。
人間の感覚では、カマキリの目は二つで、昼間はちゃんと瞳があるように見えます。
そして夜のカマキリは、コワモテのサングラスをして街をかっ歩している…。
稚拙な書き方でお恥ずかしいですが、昆虫にそなわっている、人間にはない特殊能力には、はなはだ驚かされます。

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さて、かつての日本では、子供の頃に「ファーブル昆虫記」を読むのが当たり前のような時代がありましたね。今はどうなのでしょう。
その書物の中に出てくる、「フンコロガシ」の、けな気ながんばりには、頭が下がりました。

家畜のフンという汚い仕事場をあえて選んで、がんばって仕事する、その習性はどこから生まれてきたものなのでしょう。
どこに生き残りのカギがころがっているのか、わかりませんね。
まさか農場の牛のフンの中にカギがあるとは…。
フンコロガシたちの、地道な努力、根性、覚悟、アイデアには、人間も見習いたいものです。

この「ファーブル昆虫記」は、私も子供の頃に夢中になりましたが、この本は、昆虫の世界の面白さだけを感じる書物では決してありません。
この本の中には、物事を研究することの楽しさや尊さ、地道に努力することの素晴らしさ、ものを考える際の視野の広さの大切さなど、多くのものを学ぶことができます。

日本には、いつの時代にも、つきつめるタイプの研究者や、こだわりの職人、マニアックなオタクなどが生まれてくる土壌がありますね。
普段、チャラチャラしていても、何かひとつ好きなこととなると没頭するタイプの人間も多いです。
この「ファーブル昆虫記」の存在が、なにか関係しているような気がしてなりません。

「ファーブル昆虫記」を、子供の教育に取り入れた日本の先人達は、本当にすごいですね。
母国のフランスでさえ、あまり知られていません。

昔のテレビ番組ですが、NHKで、ファーブルの足跡をたどるテレビ番組を見たことがあります。
今でも、NHK BSプレミアムの「プレミアムカフェ」の中で、ときどき再放送をすることがあるようですが、非常にすばらしい番組です。
タイトルは、「ファーブル昆虫記~南仏・愛しの小宇宙~」です。
機会があったら、ぜひ子供たちといっしょに見てみてください。
虫ぎらいの子供でも、「物事を研究することって面白そう」と思ってくれると思います。

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昆虫は、とかく毛ぎらいされる生き物ではありますが、ついつい人間のような感覚で見てしまうこともありますよね。
先程から登場するカマキリは、昆虫ではめずらしく、動物のように、頭をひねったり、振り向いたりします。自分の手もよくなめます。

カタツムリやナメクジも、振り向きますね。
あの2本の目(触角)が、それぞれ違う方向を見ているなんて、これも人間には到底できません。

甲虫類のような振り向かない昆虫は、そっと後ろから近づいていくことも可能ですが、カマキリたちは、よく振り向いてこちらを見るのです。
時折、目が合って、虫のほうが固まっています。
そんな時、ついついこちらも身体が止まってしまいます。
一瞬走る、すごい緊張感!
虫よ、そんなに構えられても…。
振り返る虫たち、ちょっと愛らしく思ってしまうのは、私だけでしょうか。

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私は、仕事がら、幼稚園や保育園に出向くことも多いのですが、「昆虫太極拳」という体操に非常に熱心な園も多いですね。
いろいろな昆虫のポーズをしたりして、とても盛り上がる楽しい体操です。
体操というよりもダンスのような楽しさです。体力づくりにもなるでしょうね。

私の子供の頃はなかったので、こんな体操があったら、さぞ楽しかったことでしょう。
自宅で行っている家庭も多く、プライベート作品でも撮影することがあります。
そこでも、カマキリは大活躍ですね。
「昆虫太極拳」の動画は、動画サイトでもたくさん見ることができますよ。

でも、子供たちには、踊るだけでなく、本物の昆虫たちのことも、もっと知ってほしいですね。
「昆虫すごいぜ!」は、小さな昆虫たちを、とても身近に感じることができる新感覚の「すごい番組」です。
不定期の放送ですが、ぜひ一度見てみてください。
下記の番組サイトでは、過去の番組映像を見ることができますよ。

番組サイト
http://www.nhk.or.jp/school/sugoize/

ちょうど明日5月3日の午前中、放送があります。
最後に、カマキリ先生の御言葉を…

「人間よ、昆虫から学べ!」。


 2019.5.2 jiho
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