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麒麟(13)感服つかまつる

【概要】NHK大河ドラマ「麒麟がくる」。明智光秀・帰蝶・斎藤道三・織田信長・今川義元・雪斎・土岐頼芸・斎藤義龍・徳川家康・松平清康・松平広忠・平手政秀・菊丸・熙子・足利義輝・長谷川博己・本木雅弘・染谷将太・川口春奈。


この一か月ほどの本コラムは、新型コロナウイルス問題のことを中心に書いており、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」のことを記す「麒麟(きりん)シリーズ」を書いてきませんでした。
前回の「麒麟シリーズ」のコラムから一か月ほど経ってしまいましたが、久しぶりに頭を切り替えて、大河ドラマのことを書きたいと思います。


◇ドラマ撮影中断

本コラムシリーズで、「麒麟がくる」のことを最後に書いたのは、約一か月前です。
コラム「麒麟(12)織田入り様のお蝶様」では、思いが届かぬ女たちや男たちのこと、帰蝶の嫁入りの悩み、織田信長のドラマ初登場、謎の間者(忍者)菊丸のことなどを書きました。
ドラマの第七回のことです。
それから一か月ほど経ち、先日の放送で、ドラマは第十三回まで進みましたね。

新型コロナ問題の影響で、今、この大河ドラマ撮影は中断しているようです。
これから、どの程度、内容が短縮されるのか、あるいは、これで終了となってしまうのか、非常に心配しているところです。

とはいえ、個人的には、ここまでの十三回分は、脚本や映像演出も素晴しく、近年の大河ドラマの中では、とびきり「お気に入り」の作品となっています。
この見ごたえと、充実度から考えると、もしこれで終了となっても、十分満足できたと個人的には思っています。
最後まで制作していただけたら、もちろん結構なことですが、なにしろ相手が、見えない麒麟のような相手ですので…。

ここで、ざっと第八回から、第十二回までの放送内容を、簡単に振り返ります。


◇第八回「同盟のゆくえ」

第八回は、「十兵衛(光秀)が申すのじゃ。是非もなかろう」という心にくい台詞とともに、帰蝶は織田家への嫁入りを決意します。
帰蝶は、このドラマの最終話あたりで、もう一度、この言葉をクチにするのでしょうか…。
信長ではなく、帰蝶の台詞にして、信長が「そうじゃのう、ハハハ」と返答するのも、斬新でカッコいい…。

駒も、十兵衛の帰蝶への想いを確認し、十兵衛のもとを去ります。

十兵衛の母の台詞も印象的でした。
「人は消えても、あの山や畑は、変わらずそこにある。そのことが大事なことじゃ。変わらずあるものを守っていくことが、残された者のつとめかもしれん。十兵衛、大事なのは、この国ぞ」。

ちょうど今のコロナ問題を思うと、どのように解釈するのがいいのか、この台詞が妙に響いてきますね。
そして、斎藤道三は、美濃の隣国である、尾張の国を手中にする野望を強くしていきます。


◇第九回「信長の失敗」

〔二人の猛者〕


第九回では、織田家と、駿河(するが)国の今川家との戦いが、いよいよ本格的に開始するという状況になります。
片岡愛之助さんが演じる今川義元は、第八回で初めて登場してきましたね。

最終的に、「桶狭間(おけはざま)の戦い」で信長に敗れる今川義元ですが、公家気取りで、気位(きぐらい)が高く、痔が悪く馬に乗れない武将、母親や家臣の雪斎(せっさい)に頭が上がらない武将、油断の隙を信長の奇襲でつかれ逃げ回るなど、何かと愚かな大将として、時代劇ドラマなどで描かれることが多い武将ですが、個人的には、かなり有能な武将であったであろうと思っています。
信長が化け物すぎたのでしょう。

個人的には、実際の今川義元は、片岡愛之助さんのような、気品ただよう凛々しい武将をイメージします。
冷酷さや強引さ、武田信玄にも劣らない知略も兼ね備えていたとも思っています。
愛之助さんは、私の義元のイメージにピッタリです。

結果的に、義元は、信長の実力をなめてしまうことになりますが、愛之助さんは、最期にどんな台詞と表情を見せてくれるでしょう。
非常に楽しみです。

* * *

それにしても、ドラマの中では、義元のかたわらに、ものすごい迫力の側近である「雪斎(せっさい)」がいますね。
雪斎が長く生きていれば、義元は、あのような最期をむかえたでしょうか。
戦国時代に名を残す名軍師の雪斎は、伊吹吾郎さんが演じています。

低音の迫力ある「御老公(ごろうこう)」という言葉を思い出す、水戸黄門で格さんを演じた伊吹さんですね。
徳川家のドラマとご縁のある伊吹さんですが、今回の大河で、少年期の家康と絡むシーンが、はたして出てくるでしょうか。
ちょっと期待しています。
大河の中で、吾郎公は「御老公」とクチにしてくれるでしょうか…。

片岡愛之助さんと伊吹吾郎さんの二人の役者さんが、画面の中で並んでいると、それを見ただけで、今川軍が猛烈に強そうに見えてきますね。


〔徳川家の礎〕

第八回から第九回には、松平広忠(徳川家康の父)が登場しました。
徳川家が出てくる歴史ドラマでも、ほとんど登場してこないような人物ですが、この広忠と、その父である偉大な松平清康の二人は、後の徳川家を考えると非常に重要な人物たちです。
「康」と「忠」の文字は、徳川家にとって重要な文字になります。

個人的には、この広忠、その父の清康、そして妖刀「村正」での清康暗殺シーン、赤穂事件で有名な吉良家などの話しが、少しでもドラマで描かれるのかと、密かに期待していたのですが、叶いませんでした。
放送時間も予算も使ってしまいますよね。
個人的には、めったに見ることができない、彼らの多くのシーンを期待していたのですが、第九回で、広忠は、あっという間に謎の集団に討ち取られてしまいました。
浅利陽介さんが演じる松平広忠…、えっ、もう退場…。

それも、まさかの信長の陰謀で…。
帰蝶と信長の結婚式と絡めるあたり、すごい脚本ですね。
自分の結婚式の日に、暗殺に向かうとは…、このドラマの信長は強烈です。

松平清康や広忠、妖刀の村正、松平家をめぐる織田家・今川家・斎藤家の陰謀は、また別のドラマで待つことにします。


〔菊丸〕

岡村隆史さんが演じる菊丸が、実は清和源氏からの名門一族である水野家の間者(忍者)であったことが、この九話で判明しました。
前述の松平広忠の正室で、家康の母「於大(おだい)の方」の実家は水野家です。
水野家は、後に徳川幕府を徳川家の横で支える最重要家臣のひとつになる家で、幕末まで、徳川家の故郷である三河や駿河の地を守っていたのが水野家です。
菊丸は、家康の身を案じて、守っているようですね。

個人的には、菊丸の素性の謎解きを楽しみにしていましたので、こんなに早く種明かしされてしまって、ちょっとがっかり…。
とはいえ、戦国時代の間者(忍者)たちは、裏切りの連続です。
現代の視聴者をだますくらいは、お手のものかも…。
菊丸と十兵衛(光秀)の不思議な関係性は、これからも注目していきたいと思います。

個人的には、菊丸が、後にまさかの石川数正になるとか、伊賀衆に組して信長と戦うとか、家康と十兵衛(光秀)のつなぎ役になるとか、天正10年の本能寺にいるとかでしたら、非常に面白いのにと思っていますが…、さてさて?

後の家康の「伊賀越え」のときに、菊丸はどこにいるのでしょうか?
本能寺から堺の家康のもとに走るのでしょうか?

まさか、あの竹やぶ「明智やぶ」で身をひそめていたのは…?
でも、彼の手でなら…。
岡村さん…、まさか、そんな重要な役?

これからも楽しみな、菊丸の存在です。


〔平手政秀〕

それから、第八回から第九回で描かれた、帰蝶の嫁入りや、松平広忠の暗殺などは、個人的にたくさんの陰謀や暗躍が隠されていると思っています。
斎藤道三、今川義元、そして織田家による、相当にハイレベルの陰謀だと思います。
その中心に、織田家家臣の平手政秀(ひらてまさひで)がいたはずです。

個人的には、この陰謀部分をドラマで見たかったのですが、描かれることはありませんでした。
ちょっとだけ、がっかりしましたが、このドラマは明智光秀の物語なので、仕方ありません。
これから描かれるであろう、美濃の斉藤家内の争いのほうが大事ですよね。

ドラマの第十三回で、平手政秀は、なんとなく忠義の家臣のような自刃でドラマから去りましたが、信長が、彼を恐れていたのは間違いないと思います。
なにしろ、土岐家の中の斎藤道三と、織田家の中の平手政秀は、その存在がよく似ている気がします。

政秀が、忠義の家臣だったのか、野心いっぱいの警戒すべき重臣だったのかは、ドラマでは、はっきりとは描かれてはいませんでした。
信長と政秀が、よい関係性ではないのは、ドラマで描かれてはいましたね。
個人的には、もう少し、上杉祥三さんが演じる平手政秀の「くせ者ぶり」を見たかったのですが…。


〔さわやか熙子さん〕

第九回では、後に十兵衛の妻になる熙子(ひろこ)が、さわやかさいっぱいに登場してきました。
水色の桔梗の花に、桃色の花びらが降り注ぎました。

第十三回までを見た限りでは、熙子の、あまり重要な登場シーンはありませんでしたが、おそらく重要な場面は、これから山ほど出てきそうです。
一方、帰蝶と信長の愛情も深まってきましたね。
駒ちゃんだけは…、「私、ダメです。ダメみたいです」。

松平清康・広忠親子、人質になる家康、菊丸、平手政秀のことは、コラム「一撃必殺・ウソぴょんがくる」で書きました。
よかったら読んでみてください。


◇第十回「ひとりぼっちの若君」

さて、第十回は、尾野真千子さんが演じる旅芸人一座の女座長が、さっそうと登場してきました。
すごみ、にらみの利く本格女優が出てくると、画面や物語がしまってきますね。
衣装も、髪型も、化粧も、斬新ですごい。

まだ登場初期のためなのか、彼女の個性がおとなしめにも感じますが、後に、大迫力の場面も出てくるような気がしています。
すごみのある絶叫を待っています。

この女座長は、ドラマの展開とともに、その素性や思惑が、徐々に明かされていくのでしょう。
陰の女武将ともいえるような存在に感じます。
でも情は深そうです。
特に駒ちゃんには。

* * *

第十回では、信長と十兵衛(光秀)の二度目の対面があり、帰蝶と鉄砲を挟んだ、二人の関係性が深まっていきます。

「(まだ見ぬ)信長を見届けるように」と、帰蝶が十兵衛に命じたことを、三人の対面の場で帰蝶は信長に、偽りなく話します。
すると信長は、自身の親子関係の悩みを話し始めます。
そこに、人質となっている少年(後の徳川家康)がやってきます。
人の人生には、それぞれに重き荷物があるものですね。

家康の人質の話しは、コラム「一撃必殺・ウソぴょんがくる」で書きました。

その部屋を出た十兵衛に、信長が走って追いかけてきて、信長は言います。
「明日もう一度会いたい」、「金は持っているか」。

この四人が集まるシーンは、後の歴史を考えると、なんとも深い…。
実際の歴史で、このような四人の対面があったとは想像しにくいですが、よくできた、非常に素晴らしいドラマシーンだと感服しました。

菊丸も、ともに「ひとりぼっちの若君」である信長と家康の様子を、しっかり天井裏からのぞいていましたね。


◇第十一回「将軍の涙」

第十一回は、将軍である足利義輝による、織田家と今川家の争いの仲裁のお話しが中心になりました。
斎藤道三の息子の義龍と、十兵衛(光秀)の関係性も、さらに複雑になります。
ここに仲裁者はいません。

尾美としのりさんが演じる土岐頼芸(ときよりよし・よりあき他読み多数)を通じて、織田家と今川家の仲裁を中心的に進めたのが、十兵衛とは…。
このあたりの複雑な話しを、上手いストーリーで、よく短くまとめたものだと、これも感服しました。

* * *

この土岐頼芸をはじめとする土岐一族のぐちゃぐちゃな関係性と争いは、複雑さの極みです。

コラム「麒麟(4)土岐のおいとま・蝶の帰る場所」で、土岐氏と、斎藤道三などの武将たちとのぐちゃぐちゃな関係性と争いのことを短く書きましたが、このあたりを大河ドラマの中で詳しく描くと、おかしな深みにはまりそうな気がします。
今回のドラマでは、描かれていません。

ですが、道三の息子とされる、伊藤英明さんが演じる斎藤義龍の真っすぐな人生観を考える上では、このぐちゃぐちゃな複雑さは、相当に影響したものとも感じます。義龍は、複雑さに反発するかのような人物にも感じます。

とはいえ、大河ドラマは一年間しかありませんので、土岐氏物語ばかりに、それほど つきあっている時間はありませんね。
第十三回で、頼芸が完全にドラマから退場したのかどうかは、よくわかりませんが、ひとまず鷹たちとともに、このあたりで退場なのかもしれません。

頼芸のライバルである土岐頼純(よりずみ)は、「麒麟がくる」の第二回で、道三により、例のお茶で毒殺されましたね。
美濃国からの「土岐のおいとま」はこれで完成です。
ずっと後、光秀ができなかった、土岐氏の再興は、家康が果たしてくれますね。
何とも、歴史は複雑です。

* * *

向井理さんが演じる足利義輝が、すぐれた仲裁役の名将軍だったこと、剣の名手であったこと、さまざまな苦労を重ねたことなどは、コラム「麒麟(10)本能寺門前の巌流島」や、コラム「麒麟(11)後悔などあろうはずがない」で書きました。

第十一回では、久しぶりに、京都勢の役者さんたちの登場です。
十兵衛(光秀)とは後に相当に深い関係を持つ、眞島秀和さんが演じる細川藤孝は、ドラマの中で、薄汚れた着物を着ていても、そのカッコよさと目線は隠せません。

寺の縁側から、雪が舞う庭園を眺める、向井理さんが演じる足利義輝将軍の後ろ姿…、なんとも美しい絵画のような風景です。
美しさと、崇高な理想を持つ、美男の将軍。

そして、彼は、十兵衛に本音をもらします。
「わしは、まだ、麒麟を連れてくることはできぬ…。麒麟が来る道は遠いのお」。
向井さんファンは、彼の涙に、相当にしびれたでしょうね。


◇第十二回「十兵衛の嫁」

第十二回は、いよいよ熙子が、十兵衛の嫁になります。
前置きのない、けっこう唐突なプロポーズにも感じましたが…。
とはいえ、いかにも可憐な「水色桔梗」の花が似合う、お嫁さんです。
熙子のイメージは、彼女を演じる木村文乃(きむらふみの)さんにピッタリな気がします。

この第十二回で、高橋克典さんが演じる、織田信長の父である信秀が亡くなります。
座して亡くなる姿は、言い知れぬ迫力がありましたね。

信秀は最期に、密かに帰蝶に何かを言い残します。
帰蝶は、それを信長に伝えますが、その内容が本当かどうかはわかりません。

日本史には、「ご主人様は最期に、このようなことを申された」と語る、家族がいつもあらわれたりしますね。
政治的なものも多く、真偽がまったくわからないものも多くあります。
ですが、歴史を左右するほど、効果絶大なものも多かったりしますね。

第十三回「帰蝶のはかりごと」につながるような、帰蝶の壮大な企てが始まったのかもしれません。
ドラマの中の信長は、完全に、その気になりましたね。

この回では、旅芸人一座の女座長の「はかりごと」も、スタートします。
この女座長もまた、勝ち馬に乗る、あるいは勝ち馬を引き寄せるのが上手なタイプのようです。


◇いよいよ、皆さまご存じの信長様が…

第十三回「帰蝶のはかりごと」のような内容の発想は、歴史ファンの私は、史実と照らして、一度も想像することがありませんでした。
歴史ファンの私は、帰蝶を甘くみてしまっていたのでしょうか…。
なるほど、非常に面白い見事な「ドラマ発想」だと、感服しました。

今回のコラムでは、何度、感服したでしょうか。
まさに、「感服つかまつる」。

* * *

第十三回から第十四回の内容には、個人的に、今回の大河ドラマで、非常に楽しみにしていたシーンがやって来ます。
皆さまご存じの信長様の姿が、いよいよ出てきます。

第十三回では途中まででしたが、私の期待を裏切らない内容でした。
第十三回と第十四回のお話しや、染谷将太さんが演じる信長について、次回コラム「麒麟(14)」で書きたいと思います。

それまで、ひとまず
「一服つかまつる」。

それにしても、大河ドラマの制作…、コロナ問題を無事に乗り越えてほしいものです。

* * *

コラム「麒麟(14)」につづく。


【 追伸 】
今、本コラムを、コロナ感染による病床で読まれている方々も、おられるかもしれません。
今は当初よりも、効果のありそうな薬や治療法も見つかってきています。
人工呼吸器の数も増えてきました。
あなたが乗り越えた先の世界は、そう遠いものではありません。

それに、あなたは、決してひとりぼっちではありません。
多くの医療関係者や、名前も知らない多くの市民が、あなたを心配し、応援しているのです。

私は文章を書くことでしか応援できませんが、あなたが戻るのを祈っています。
このコラムも、ひとつの清涼剤の一服になればと思っています。
あなたが、がんばって乗り越えてくれることを私たちは信じています。

あなたはコロナには負けない。
勇気を持って、乗り越えろ!


2020.4.14 天乃 みそ汁
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