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「青い衝撃」の日

【概要】ブルーインパルス。医療従事者に感謝と敬意をこめて。「青い衝撃」の日に多くの人は何を語ったのか?


◇各種ブログで…

前回コラム「青い衝撃・青くない強い意志」では、2020年5月29日に東京上空を飛行したブルーインパルスについて書きました。
今回のコラムは、その続編として、その日に日本各地の多くの皆さまが、SNSでどのような発言をしていたのかなどについて、書いてみたいと思います。

私は、コラム「ぼんぼりの灯は照らす」の中で、今年2020年の異例ずくめの「ひなまつり」の人々の過ごし方について書きました。
その時も、多くのSNSをリサーチしましたが、今回も同様に、300件から400件あまりの内容を見てみました。

今回は、ツイッターは除外し、しっかりと文章が書かれた内容のブログを中心に見てみました。
ですから、ツイッターであらわれる傾向とは、少し違うとも思われます。
ですが、人々の真意や行動がよく伝わってきます。

「ひなまつり」のコラムの時もそうでしたが、今回もやはり、個人の頭で想像する範囲を超えた、さまざまなドラマや状況を、SNSで感じることができました。
後ほど、微笑ましいもの、笑えるようなもの、感動的なもの、泣いてしまいそうなものなどを、簡潔な内容でご紹介いたします。

今、「ビッグデータ」の活用が社会で叫ばれていますが、実はこうした細部の情報収集に弱点があったりします。
ひとつづつ読むというアナログな方法ではありますが、ビッグデータから漏れてしまうような大切な内容を、見ることができたような気がしています。

* * *

さて、今回は、各種のブログを中心に読んでみました。
300~400件をみた範囲では、その大半は、ブルーインパルスの飛行を肯定する内容でした。

否定的、批判的な内容は、わずか数件しかありませんでした。
私の当初の想像からは、少なすぎる気もしています。

今、女子プロレスラーの問題以降、各ブログは、何か強いフィルターをかけているのか、それとも、社会全体に、反対意見を言わせない雰囲気や、それを逆に誹謗中傷する雰囲気が強くあるのか、とも感じるほどの数の少なさです。
ひょっとしたら、ツイッターでは、もう少し傾向が異なるのかもしれません。

私は、ブルーインパルスの飛行肯定派ではありますが、否定的な意見の中にも、光るものや何かの意味があるとも思っていますので、それを表に出せない雰囲気があるのなら、それはそれで、別の問題があるかもしれません。


◇深刻な現実

否定派、批判派の意見を読んでいますと、「空をながめている暇などない、一刻も早く支援金を…」、「飛行機の飛行と感謝の気持ちを、結びつける意味がわからない」などのものもありました。

私は、まだまだ表面的な気持ちの応援ではなく、目に見える支援を求める人が少なくないのだという現実を見た気がしました。
コロナ感染の恐怖とは違う、まさに切羽詰まった、生死の境に生きる人々が、まだまだ、周囲には多いということを、つきつけられたように感じました。

* * *

今、「生活保護になってもいいから、とにかく住まいを失わないで…」と、多くの方面から叫ばれていますね。
無茶な借金をすることは後でたいへんですが、住まい(住所)がなくなると、立ち直りの機会を失うことにもなりかねません。

4月頃には、ある大臣が、「中小企業の社長の皆さん、国が何とかしますから、今は、社員を解雇しないでください」と何度も叫んでいました。

とはいえ、このままでは社員に退職金も渡せなくなると、まだ体力が残っているうちに廃業に踏み切る経営者も少なくありませんでした。
その後にやって来る経営難による地獄よりは、まだマシだとも言っていました。

今年の夏のボーナスも、すでに出せないと表明している企業も少なくありません。
経済的に、この夏を乗り越えられるのかどうか…、その深刻さが表面化してくるのは、これからです。

* * *

先日、テレビ番組で、幼い子供と小学生をかかえた、シングルマザーの話しを放送していました。
彼女は派遣社員で、いきなり解雇通告です。
失業保険はしっかりもらえるのでしょうか…。
家も借家。
貯金で暮らせるのは、あと2か月がやっと…。
新しい仕事は見つからない。
テレビを見ていて、こんな厳しい現実に、もし自分が遭遇したらと絶句しました。

いったい、世の中に、これと同じようなケースがどのくらいの件数あるのでしょうか?
どこを調べても、その件数がわかりません。

東京にいる、住宅を持たないネットカフェ難民の人数は、おおよそ把握できているようですが、その多さにも驚きます。

新型コロナは、身体的な生命の危機を私たちにもたらしただけでなく、さまざま危機を同時に呼び寄せたのです。
「未知のウイルスの感染」の本当の恐ろしさは、まだ終わっていません。

ボーナス払い…、住宅ローン…、家賃の支払い…、今後の学費…、通院や治療…、介護…など、失業や廃業に限らず、国民のほとんどは、その人なりの何らかの問題と対峙しているのだろうと感じています。


◇無駄にはしない

私は個人的に、こんな苦しい時だからこそ、絶望に押しつぶされそうになった時に、青空を飛ぶブルーインパルスの雄姿を思い出してほしいと思っています。
ブルーインパルスを、自分の味方、自分のチカラだと感じてほしいと思っています。

その日に感じた衝撃、そして、勇気、希望、連帯感を…思い出してください。
多くの人々が、その瞬間に、それらを共有したのです。

人は、希望のない世界では生きられません。
ブルーインパルスを、自分の希望だと感じてほしいです。

* * *

人によって、苦難の大きさは違いますが、自身と同じような境遇で戦っている人は、必ず近くにいるはずです。
きっと、同じブルーインパルスを見ていたはず…。

今は、光が見えなくとも、いつかブルーインパルスを思い出せる日がくるはず…。

ブルーインパルスの飛行に肯定的な人たちの中にも、否定的な人たちの中にも、どちらにも、苦しみの底にいる人たちはたくさんいます。
今は、両者がいがみ合う時でもないような気もします。

* * *

すべての現象には、何かの理由がありますね。
そこに意味を感じるのも、意味を持たせるのも、それぞれの人次第です。

ブルーインパルスの飛行に、本当に大きな意味を持たせることができるのも、人間です。

無駄な飛行だったとならないようするには、私たちのこれからの行動次第なのかもしれませんね。


◇その瞬間に…

さて、リサーチしたブログの中の、さまざまな内容を、あまり詳細に紹介できませんが、どのような内容があったのかを書いていきたいと思います。

まずは、微笑ましいもの、笑ってしまうようなものから…。

* * *

今回の東京上空の飛行の情報については、事前に知らなかった人も相当にいました。
終了してから、ニュースで知った東京都民も相当にいたのです。

中には、家庭内で、旦那が事前に知っていたのに、奥さんや子供たちに伝えず、自分だけが仕事場近くでナマで見ていたという方も少なくなかったようです。
後で、家族で大モメです。
「どうして、そんな大事なことを教えないの…怒」。

実は、わが家もそうでした。
「つい、うっかり…。ほれ、今、テレビニュースでやってるよ…」。
「早く言えよ…、再怒」。

こんな家庭も少なくなかったようです。

今回、政府も、国民の反応に、ビクビクしていたのかもしれませんね。

* * *

今回、「医療従事者に、空を眺めている暇があるのか…」という市民の意見もあったようですが、私の今回のリサーチした印象では、相当な数の医療関係者がブルーインパルスの飛行を、ナマで見ていたようです。
もちろん、手を離せない医療従事者も多かったでしょう。

病院長の粋なはからいで、その時間に、病室の窓や、屋上から、看護師が患者といっしょに、その飛行を眺めるように通達した内容も見つけました。
何カ月も、空を眺めていなかった患者が、思わず涙したというものも多くありました。
白い雲を眺めながら、かつて飼っていた白色の愛犬を思い出し、涙したというものもありました。
病気やコロナ以外の会話を、患者さんと久しぶりにしたという看護師もいました。

* * *

調べていましたら、高齢者施設の中には、建物の屋上や庭に、可能な高齢者のみを外に出し、ブルーインパルスが来るのを待っていたという施設も少なくありませんでした。
その写真には、車いすの女性高齢者たちが、その瞬間に、皆でバンザーイと手をあげているのです。
ひょっとしたら、その中には、太平洋戦争で夫を戦場で亡くした方もいたかもしれません。
彼女らの笑顔に、何か救われた気がしました。

* * *

ここからは、微笑ましい内容を、箇条書きに…。

・事前に何も知らずに、犬の散歩に出かけたら、犬が急に興奮しはじめ、異変に気づいたお母さん…。
・隅田川の土手が、まるでピクニックの場所のような明るい雰囲気に…。
・宅配便をドアの前で受け取っていたら、その瞬間に轟音と白い雲…、宅配のお兄ちゃんと一緒に並んで見ていた…。
・スーパーのレジが一斉に、ざわめき立った…。レジ打ち間違えないで…。
・いつもの買い物を、この時間に合わせた…。
・タクシーの運ちゃんと、突然の出来事で、社内で二人で大盛り上がり…。
・家の中で仕事をしていて、外で何かうるせえ音だなと文句をたれていたが、後で知って、大後悔したお父さん…。
・その飛行に感動して、ブルーインパルスのプラモデルを購入し、作り始めたお父さん…。
・ブルーインパルスの写真を撮ったのはいいが、あまりの撮影の下手さに笑ってしまった…。(実は、「ブルーインパルス 下手写真選手権」という現象がおきました)
・道路で大興奮して、はしゃぐ子供たちの声や姿を、何カ月ぶりに感じた…。
・お尻に手づくりの白い雲をつけて、子供が部屋中を走り回っている…。
・子供が、その日は、大好きなプラレール遊びをしなかった…。
・「ブルーインパルス」と言いたいのだろう、でもしっかり言えない、4歳の息子…。
・家にあるブルーシートを、意味もなく庭に敷いてみた…。
・その日は8時間ぶっ通しで、女子どうしで食事と会話。でもその瞬間だけ、ブルーインパルスを見て大興奮した…。
・東京に住む息子から、ブルーインパルスの写真だけが送信されてきた…。
・東京に暮らす息子は、ブルーインパルスをしっかりナマで見ているのかと心配する、田舎の母親…。
・中年男性の多くが、何も語らず、ブルーインパルスの写真だけをSNSにあげている…。
・急に友人が、若い頃にパイロットを目指していた頃の話しを始めた…。
・「ナマで見逃した」とつぶやいたとたん、多くの友人から、どっと写真や動画が送信されてきた…。
・ある若者のラインの会話…、超感動!アレはモテる。アレがモテなければ世も末!…私はその会話にワロタ。
・青色のゼリー菓子を、その晩、家で作った…。
・何となく、その日、街に青色の洋服が多かった…。

…本当に面白い内容が満載でした。

* * *

今回は、その日の朝から、テレビで伝えていたこともあり、多くの人が、スマホをかまえて、路上や公園、ビルの窓際や屋上で、待機していた人が多くいました。
皆が、大空を一斉に眺めているという異様な光景に、初めて、それを知った人もたくさんいました。
ますます、東京の街は、異様な上向き状態になっていきました。
同じ時刻に、皆が一斉に、目線を上に向け、笑顔で大空を眺めたのです。

最近は、目線を下に向け、渋い顔や、困った顔、怒った顔ばかりを多く見かけますが、そんな中、この瞬間だけは、東京全体が上を向いた気がしましたね。
この瞬間の、何かを分かち合う感覚…、共有する感覚…、ずっと忘れていたような感覚です。
何か、いつもと違う会話をしたり、まったく知らない人であっても、人の笑顔を見るのはいい気分です。

ひとつのスマホを、何人かで眺めながら笑っているのは、きっと撮影した写真があまりにも下手だったのでしょう…。

東京だけの体験では、少しもったいない気にもなります。
これから、日本各地で行われることも検討されているようですね。

ほんのわずかの瞬間かもしれませんが、笑顔が全国にひろがっていくのでしょうか…。


◇気持ちが届いた瞬間

ここからは、泣けてきそうな、感動的な内容を紹介いたします。

・給付金の申請書を握りしめながら、役所の窓から、ブルーインパルスの姿を見たとき、うれしくて涙が流れた…。
・私は戦闘機が嫌い、大きな轟音も嫌い…、でもこの飛行機を見て、うれしい涙が出た…。
・ブルーインパルスを見て、ギスギスした自分の心に水をあげることができた。(略)つらくて、ここまで、どう生きてきたかわからないが、間違ってはいないと思った…。
・「また、お前らのせいで税金を使われた」と言われるのだろうが、また医療の仕事にがんばれる気力が出た…(医療従事者)。
・やっと世の中が、味方してくれるようになったのかも…(医療従事者)。
・私は、誰とも会話をしていない。何の申請書も来ない。マスクも来ない。見捨てられています。来てくれたのはブルーインパルス。うれしかった。

これらの感動的な言葉は、私の中からは出てこないものだと感じました。

ブルーインパルスが、今回届けたメッセージは、はかりしれないほどの大きさだったのかもしれません。


◇あなたも…

今回、多くの方々のSNSを見ていると、ブルーインパルスのカッコよさや、迫力だけに感動しているものは、非常に少ないと感じます。
多くの方々が、同時に、たくさんの希望や連帯感を感じているのです。

今回、調べている中では、元自衛官の方、自衛官の家族の声も少なくありませんでした。
その苦労や、自衛官への世の中からの誹謗中傷などを切々と語っているものもありました。
隊員たちの、純粋な心構えも伝わってきます。

今回の飛行チームの姿の写真と言葉を少しだけ見ましたが、ベテランから若手まで、その冷静な表情とコメントにも頼もしさを感じます。
当たり前の仕事をしただけ…。
この冷静さこそ、戦闘機乗りには、必要なことなのかもしれません。
地上の興奮や、激論をよそに、彼らの姿こそ、本当の戦場にふさわしいとも感じました。

* * *

今回の東京での飛行を見て、多くの方々が、自分の人生を振りかえった方も少なくなかったようです。

今回のリサーチから、いわゆる平和活動家や、医療支援者の多くが、かなり肯定的な意見を述べられていると感じました。
現実の社会は、言葉や理想だけでは、平和や医療は成し遂げられませんね。

* * *

今回、私は、日本社会の中に、感謝と誠意という思想が、しっかりと根付いていることを強く感じました。

日本では、それそれの家庭、幼稚園、保育園などで、感謝・謝罪・誠意という意識が、幼少の頃からしっかり教育されます。
大人の日本社会も、基本的には性善説が前提となっています。
政界や芸能界、スポーツ界も、しっかりとした謝罪が求められますね。
感謝の気持ちも、謝罪と同様に、思うだけでは伝わりません。

日本人は、旅先の風景に「こんにちは」と呼びかけたり、品物に「ありがとう」と声をかける民族です。
スポーツ選手も、誰もいない試合会場に頭を下げたり、野球の投手はマウンドに手をつけて祈る選手も少なくありません。

私は、涙を流しながら、ブルーインパルスの姿を眺める多くの人たちの光景を見て、そして多くのSNSを読んで、それとまったく同じだと感じました。

* * *

今回、ブルーインパルスが、何かの意味を持って、東京都民の上空を飛んだのは間違いありません。
今は、その飛行を無駄にしないように…。
そして、希望の存在をしっかり信じて…。

近々、私は、コラムで妖怪「アマビエ」のお話しを書きますが、今回、日本人のこうした姿を知って、これなら「アマビエ」に頼らなくても、日本はそう遠くない時期には、必ず乗り越えられると強く感じました。

きっと、あなたも…。

* * *

【追伸】
先日、医療従事者支援呼びかけ飛行中の、カナダ空軍の「スノーバーズ」一機が墜落し、女性パイロットが亡くなりました。
国は違えど、その立派な行動に感謝し、心よりお悔やみ申し上げます。
とにかく、整備も、飛行も、隊員の安全も、常に完璧さを忘れないでいただきたいと思います。
その上での、勇気と感謝です。

2020.6.6 天乃みそ汁
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