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即位の礼・大嘗祭

【概要】即位礼正殿の儀。祝賀御列の儀。大嘗祭。高御座と御帳台。

元号のお話しは、コラム「平成から令和へ」で書きましたが、元号は、645年の「大化」から始まり、248番目の元号が「令和」です。
1375年の歳月です。
紀元前の初代天皇 神武天皇から数えますと、2679年です。
それ以前の皇室は神話の世界となります。
コラム「神話のお話し(前・後編)」でも書きましたが、神話は架空のお話しばかりではありません。
日本の天皇家の歴史は、エジプト王朝の3000年に近くなってきましたね。
日本は継続中ですから、いつかは歴史の年月で越えますね。
ひょっとしたら、すでに超えているのかもしれません。

* * *

明治天皇が「一世一元の詔」を発布されてからは、天皇と元号の数は一致しています。
明治時代以前は、政権交代や天変地異などでも、改元していました。
今上天皇(今上陛下)である「令和」時代の天皇、徳仁(なるひと)天皇は、神武天皇から126代目、元号は248番目となります。
ですから日本の天皇の即位の儀式は、少なくとも125回、実際は、それ以上はるか多い回数が行われていたことになります。

とはいえ、私たちの一生の中で、そうそう経験することではありませんね。
場合によっては、一度も経験しないで生涯を終えます。
私たちの毎日の日々は、歴史の中に飲み込まれていきますが、私たちは、歴史の中でしっかり生きているということですね。


◇即位関連の儀式と行事

今回の即位の儀式や関連行事は、昭和から平成の際に行われたかたちを踏襲するかたちで行われることが決まっています。

下記に、昭和から平成の際に行われた、主な儀式や行事を書いてみます。

1.剣璽等承継の儀
2.即位後朝見の儀
3.賢所に期日報告の儀
4.皇霊殿神殿に期日報告の儀
5.神宮神武天皇山陵及び前四代の天皇山陵に勅使発遣の儀
6.神宮に奉幣の儀
7.神武天皇山陵及び前四代の天皇山陵に奉幣の儀
8.斎田点定の儀
9.斎田抜穂の儀
10.即位礼当日賢所大前の儀
11.即位礼当日皇霊殿神殿に奉告の儀
12.即位礼正殿の儀
13.祝賀御列の儀
14.饗宴の儀
15.園遊会
16.神宮に勅使発遣の儀
17.即位礼一般参賀
18.大嘗祭前一日鎮魂の儀
19.大嘗祭当日神宮に奉幣の儀
20.大嘗祭当日賢所大御饌供進の儀
21.大嘗祭当日皇霊殿神殿に奉告の儀
22.大嘗宮の儀
23.大饗の儀
24.即位礼及び大嘗祭後神宮に親謁の儀
25.即位礼及び大嘗祭後神武天皇山陵及び前四代の天皇山陵に親謁の儀
26.茶会 即位礼及び大嘗祭後賢所に親謁の儀
27.即位礼及び大嘗祭後皇霊殿神殿に親謁の儀
28.即位礼及び大嘗祭後賢所御神楽の儀

稲作の時期もありますので、今回は順番が前後する部分もあります。

今回、上記の1番と2番は、今年、令和元年(2019)5月1日に行われましたね。テレビの生中継もありました。
現代人は、テレビで、こうした一連の儀式や行事を目にできます。なんと幸せなことでしょう。
三種の神器、天皇陛下の言葉…、感動しました。
5月4日には、「即位を祝う一般参賀」が行われましたね。
なんと、皇居に14万人を越える人々が訪れ、計6回お出ましになられました。

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これからの儀式や行事について書きます。

当初、10月22日、上記10番から14番までが行われる予定でした。
13番の「祝賀御列の儀」が、いわゆる東京の都心で行われるオープンカーでのパレードですが、今回は台風被害を考慮し、11月10日に延期となりました。
13番を除き、10番から12番、14番は、予定通り 22日に行われる予定です。
「饗宴の儀」は、22日のほか、25日、29日、31日にも行われます。


◇即位礼正殿の儀


22日は、皇居宮殿は、さながら平安時代となります。
「即位礼正殿の儀」は、平安時代から続いている形式でおおむね行われるようです。
「即位の礼」に関する儀式は、平安時代に、きちんとしたかたちに整えられたそうです。

皇室の方々、儀式に関わる人々が、みな平安時代の装束でお出ましになります。
平安時代と違うのは、メガネをかけている人がいるかも…。

皇室の主要な男性は、右手に「笏(しゃく)」を持ち、女性は「扇(おうぎ)」を手にします。
「笏(しゃく)」は、中国発祥で、6世紀頃の奈良時代に日本に伝えられたそうです。
現代でも、神社の神主様が手にしていますね。

ちなみに、有名な聖徳太子像の絵でも、太子が笏を手にしていますが、これはおそらく奈良時代に描かれた想像の絵で、太子がもし実在していたら手にしていたはずはないといわれています。「聖徳太子は実在しなかった説」の、根拠のひとつですね。

さて、儀式の中の武士の装束も、戦国時代とは大きく違います。
戦国時代の感覚や、現代の感覚で見ても、相当なものですね。
子供たちにも、ぜひ見せてあげたい、日本の古い装束です。
このファッションは、日本人の若い世代だけでなく、外国の人々にも、衝撃を与えるかもしれませんね。
武士の顔の両側のこめかみの横についているものは、いったい何? 髪型…?

平安時代の装束とはいっていますが、奈良時代でも、それほど違わないのかもしれません。
それにしても、江戸時代、戦国時代、室町や鎌倉時代を飛び越えて平安時代とは、すごいタイムトリップです。
よくよく考えてみると、どの時代もそれほど違いはないということですね。

私たちが、歴史の絵巻物や絵などで見ている光景が、実際に目の前で繰り広げられます。
テレビの中に見る映像は、大河ドラマではありません。
本物の歴史の中に刻まれる一場面なのです。

歴史の中で、昔の人がその目で見て、絵に残してきた出来事を、私たちは実際に目にすることになります。
歴史再現でなくて、一般の人々が本物の平安の儀式を見ることができるのは、天皇の即位の時くらいしかありませんね。
もはや中国でも、朝鮮半島でも、無くなってしまった大昔からの儀式を、日本だけは途絶えることなく続けているのです。
なんとも感慨深いですね。
「ガラパゴス」も、時にはいいかもしれません。

天皇の玉座を「高御座(たかみくら)」、皇后の玉座を「御帳台(みちょうだい)」といいます。
冒頭写真のようなかたちのものですが、儀式での実物は写真のものよりも、はるかに華やかで荘厳です。
おそらく、その日のテレビ放送番組は、この映像で埋め尽くされると思います。
高御座と御帳台は、2019年12月22~25日、2020年1月2~19日に東京国立博物館(休館日あり)で、2020年3月1~22日に京都御所(休園日あり)で一般公開される予定です。

10月23日は、各国の貴賓を招いて赤坂御所での茶会と、安倍首相夫妻主催の晩餐会の予定です。
平成の時のような園遊会は行われません。

11月9日は、「国民祭典」が行われる予定で、超党派議員団や経済関連の方々、各種民間団体が集まります。
音楽や芸能の披露も行われ、タレントの嵐や、ピアニストの辻井伸行さんが出演されます。

11月10日は、午後3時から約30分ほど、前述の、延期された13番の「祝賀御列の儀」、いわゆるパレード(皇居宮殿から赤坂御所まで)が開催されます。


◇大嘗祭

11月14日から15日には、上記22番の「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」が、「大嘗宮」で行われます。
皇居東御苑(旧 江戸城本丸)には「大嘗宮」がすでに完成し、ここで行われます。

14日が「悠紀殿(ゆきでん)供饌の儀」、15日が「主基殿(すきでん)供饌の儀」です。

「大嘗宮の儀」では、お米などの食物を、皇室の先祖の「天照大神」をはじめとする多くの神様にお供えし、今上天皇もクチにされます。
国の安寧と五穀豊穣を祈る儀式です。

「大嘗宮の儀」の後、16日と18日に、上記23番の「大饗の儀」が行われます。
「大饗の儀」は、「大嘗宮の儀」参列者らとの饗宴です。

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建設された「大嘗宮」は、11月21日~12月8日まで一般公開されます。

大嘗祭の後、11月22~23日、天皇陛下は、親謁の儀・伊勢神宮に参拝。
27日に、親謁の儀・神武、孝明両天皇陵に参拝。
28日に、親謁の儀・明治天皇陵に参拝。
12月3日に、親謁の儀・昭和、大正両天皇陵に参拝されます。

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天皇の即位では、「即位の礼」と「大嘗祭(だいじょうさい)」は、本来の日本の古式のかたちで、日本の装束で行われますので、特に大切なものとなっています。奈良時代の天武天皇の頃から行われているそうです。

歴史がより古いのは「大嘗祭」と思われます。
「大饗の儀」では、大嘗祭である「大嘗宮の儀」で供えられた御神酒(おみき)である、白酒(しろき)と黒酒(くろき)がふるまわれます。
「大嘗宮の儀」で御神酒のお供えに使われる器類が、なんとも縄文や弥生時代の土器のように見えます。
いかに古い歴史をそのまま伝えているかがわかります。
ひょっとしたら、この大嘗祭の儀式や行事は、3000年以上前の縄文時代以前のかたちを、そのまま残しているのかもしれませんね。
そう考えると身震いします。
今回も、神秘的な「大嘗宮の儀」の模様を、テレビで見ることができると思います。
まさか生中継はないと思いますが…。

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天皇は毎年11月23日(祝祭日)に、稲の初穂を皇祖神に供えて、共に食するお祭りである「新嘗祭(にいなめさい)」を行っており、「大嘗祭」は、それに似た内容のようですが、「大嘗祭」は天皇一代で一度しか行わない特別なものです。
大嘗祭が行われる年は、新嘗祭は行われません。
この儀式は、日本書紀にも書かれていますし、おそらく、もっと古い天皇家の祖先の神話の時代から行われていたと考えられています。
神話のお話しは、よろしければ、コラム「神話のお話し(前・後編)」をご覧ください。

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「大嘗祭」である「大嘗宮の儀」で使用されるお米の収穫地は、上記8番の「斎田点定の儀」という儀式の中で、亀の甲羅による占い「亀卜(きぼく)」で決められます。
その後、上記9番の「斎田抜穂の儀」という収穫の儀式で収穫されます。

今回は、東日本を意味する悠紀地方(京都から東)の栃木県高根沢町のお米を悠紀殿に、西日本を意味する主基地方(京都から西)の京都府南丹市のお米を主基殿にお供えするそうです。他にも全国各地からお米などの農産物、酒、塩、水などが集められます。
この形式は、明治時代に調整され、今に伝わっています。

「大嘗宮」の正面から見て、右側の大きな屋根の建物が「悠紀殿」、左側の大きな屋根の建物が「主基殿」です。

全国各地のテレビニュースで、稲の収穫風景などの模様を見られた方も多かったと思います。
特に、栃木と京都のお米の収穫「斎田抜穂の儀」は、白色の神職の装束の人たちが、田んぼに入って稲刈りをしていましたね。
少し不思議な光景にも見えます。全国ニュースでも大々的に伝えられました。もちろん「斎田点定の儀」も報道されました。
稲作に選ばれた農家の方は、どのくらいの誉れでしょう。想像もできません。

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年内、これからも重要な儀式や行事が続きます。

5月の即位の時の一般参賀では、14万人の人々が皇居に集まったことを考えると、「祝賀御列の儀」であるパレードは想像もできません。
平成の時のパレードは沿道に12万人の人出だったそうです。
9月のマラソン五輪代表選考レースの沿道は52万人の人手でしたが、パレードの距離はマラソンとは比べものにならないくらい短いです。
52万人なんて数は、いくつかの県の総人口並みですね。
おまけに11月10日は日曜日…。11月の東京は、ほとんど晴れ…。

もし写真撮影ができましたら、このコラムでも、ご紹介していきます。
テレビを見るほうがいいかな…?
でも、身体で歴史を感じたい…。

いずれにしても、元号の「元年」というのは、特別な年ですね。
10月22日、テレビを見ながら、日本人であることを再認識し、平安の絵巻物を楽しみながら、お祝いしたいと思います。


2019.10.20 jiho
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